2021/04/01
第1号 その消毒薬、だいじょうぶ?
時々足を運ぶ百貨店の食品売り場に、スマートな仕草で手指消毒する店員さんがいる。流れるような美しい消毒所作にいつも見惚れてしまう。新日常ならではの楽しみの一つだ。
コロナ禍となってから一年以上が過ぎたが、感染者数はリバウンド気味(3月下旬現在)、ワクチン確保の見通しも不透明(同)である。今後も続くウイルスとの闘いに備え、慶應義塾大学病院の薬剤部副部長で同大学薬学部准教授の青森達(あおもり・とおる)さんに消毒薬の基礎知識について教えていただいた。
▽すぐに両手をこすらない
まずは正しい使い方から。「消毒薬の適量は、手に取ってから15秒以内に乾燥しない程度の量。ポンプの場合は1プッシュ分、最後まで押し切って使う。手のひらに取って、すぐに両手をこすり合わせてはいけない。片方の手のひらに溜めた液にもう片方の手の指先を浸してよくこする。続いて反対の手のひらに残りの液を移し、もう片方の指先を同様にこする。さらに手のひら→手の甲→指の間→親指→手首と順番に擦り込んでいく」。
▽選び方は?
薬局などに並んでいる手指用消毒薬はさまざまだが、エタノール濃度をはじめとする成分や使用期限、使用方法が書かれていないものは避けた方が良いという。
「エタノール濃度60%でもコロナウイルスにはある程度の効果があるようだが、適正濃度は70~95%。最近は入手が可能なので、できるだけ探して使ってもらえたら」。
なお、スプレータイプ(液体タイプ)とジェルタイプで効果に違いはないとのこと。「ジェルタイプの方が乾きにくいので少ない量で済む。コンパクトで持ち運ぶ際は便利」と評価する。シートタイプもあるが拭き残しが出てくる懸念から「手指消毒におすすめとは言い難い」。テーブルやスマホなど平らな面の消毒に活用できる。
▽共用の場合
最近は入り口に消毒薬を設置した施設が多いが「プッシュしても少量しか出てこない場合がある。それでも消毒した気になってしまう点が良くない」と指摘。さらにプッシュ部自体が汚染されている可能性があるため、足踏み式や手をかざすと噴射されるタイプがより望ましいという。
帰宅後は、石鹸と流水で十分に手洗いする。手洗いだけで死滅しない、ある種の細菌などと異なり、コロナウイルスは石鹸と流水できちんと洗えば感染力を失わせることができる。「消毒薬によるさらなる除去は必要ありません」。
余談だが、先日、スーパーの入り口にあった消毒薬を手のひらに取ったら、モヤモヤとした細かい糸くずのようなものがたくさんくっついてきて、思わず声を上げそうになった。容器に書かれた文字は色あせていて、判読不能。品質を確かめるすべがなかった。
外出時はできるだけマイ消毒薬を持ち歩き、都度こまめに使うのがベストだとあらためて思った。
(文・青木理子)