生協知っトクコラム

2023/10/02

第11号 「咲くやこの花館」の担当者直伝!秋から始めるガーデニング

 NHK朝ドラ「らんまん」の影響か、近ごろ、植物についての会話がはずむ(ドラマは9月に終了しましたが)。実母はドラマを毎日見ていて「草や花の素晴らしさに気付いた」そうで、これまで義務的にやっていた庭の手入れが楽しくなったという。花が終わった鉢のアジサイの枯れた部分を切って地植えし、「芽が出てきた!」と大喜びしていた。自分の手で命をつないだという実感は、植物を育てる醍醐味の一つだろう。
 私も植物が大好きだ。だが、大抵の場合、枯らしてしまう。ホームセンターで「強い品種です」と書いてある苗を選んでいるのに、枯らしてしまう。よく「緑の手」と表現される、植物を上手に育てる能力がないのだと思う。よそのお宅の植え込みで花が元気に咲き乱れているのを見ると「一体どうやっているのですか?」とピンポンして聞いてみたい衝動に駆られる。
 暑さも落ち着く10月以降、新たに植物を育てたい。そう思っているのは、きっと私だけではないだろう。そこで、大阪の植物園「咲くやこの花館」(大阪市鶴見区)の植物管理担当、石田真結子さんに秋から育てる植物の選び方、育て方などについてお話を伺った。


―秋から育てる花のおすすめをいくつか教えてください。

石田さん お庭で育てるものとしては、まずは「チューリップ」です。秋に球根を植えると春に花を咲かせます。様々な色や形の花をホームセンターやオンラインショップなどで手軽に購入することができます。咲くやこの花館では、主に原種のチューリップを栽培展示しています。園芸品種と比べると小ぶりで乾燥に強い特徴があります。
 「パンジー」「ビオラ」も花屋さんやホームセンターなどで手に取りやすい価格で売っています。花が一番多く咲く時期は3~5月ごろですが、冬でも花が咲くため庭を彩ってくれます。チューリップなど、冬は地上には出てこない球根植物の近くに植えることで、球根植物への水やり忘れの防止にもなります。冬に咲く花、春に咲く花を組み合わせて植えることで、長く花を楽しむこともできます。
 「クリスマスローズ」は、寒さに強く、秋に苗を植え付けると、冬~初春にかけて花を咲かせます。うつむいて咲く花が特徴的です。品種改良が進み、豊富な色や、大きさ、八重咲のもの、また上向きに咲くものまで様々な品種が売られています。当初は「ヘレボルス・ニゲル」というクリスマスごろに花を咲かせる種のみを指してクリスマスローズと呼んでいましたが、最近ではヘレボルス属全体をさしてクリスマスローズと呼ばれることが多いです。


―屋内で楽しめるものは。

石田さん 近年、非常に人気が高い多肉植物の中からご紹介します。まずはアナカンプセロス属「吹雪の松」もしくは「吹雪の松(アナカンプセロス属)」。秋から冬にかけて紅葉し、緑色の夏とは異なる色味が楽しめます。寒さには比較的強く、寒さにあてると紅葉しますが、霜が降りるような寒さは苦手です。室内に取り込み日当たりが良い場所で育てましょう。また、昼夜の寒暖差を小さくするため室内の窓際から少し離れた場所が良いです。
 「アロマティカス」もおすすめです。ケニアから南アフリカ原産のシソ科プレクトランサス属の植物でミントのようなさわやかな香りがします。ミントのように料理に入れて使われるほか、ゴキブリ除けの効果もあるのだとか。日光を好むので、秋まではベランダでの栽培がおすすめです。夏は風通しの良い場所に置きましょう。冬の寒さは苦手なので、日当たりのよい室内に取り込んでください。
 「コノフィツム」の仲間はナミビア~南アフリカ原産のハマミズナ科コノフィツム属の植物です。自生地では岩場に生えています。秋に花が咲き、市場に良く出回ります。休眠期があるため、上記の2つより少々難易度が高いですが、ぷくっとした独特の形と鮮やかな花が人気です。夏が休眠期で、表面が茶色い薄い膜で覆われます。寒さには比較的強いですが、霜が降りるような寒さの際は室内に取り込み日当たりが良い場所で育てましょう。

―石田さんは食育の観点から、家族での野菜作りも推奨されていますね。食べられる植物も魅力的です。

石田さん はい。お子さんがいるご家庭はとくに、いっしょに野菜を育てると良いのではと思います。ほうれん草は播種から収穫までが2か月ほど。比較的短期間で楽しむことができます。春蒔きに比べると秋蒔きは虫がつきにくいです。
 ラディッシュ(二十日大根)はもっと早いです。種を蒔くと20日ほどで収穫できることから「二十日大根」という和名が付けられています。地中に可食部分ができますが、小さいためプランターで育てることも可能です。収穫をせずに春ごろまで育てると、淡いピンク色の花が咲きます。
 様々な葉を楽しむことができるベビーリーフ(ミックスリーフ)も収穫までは比較的短く、次々と収穫することができます。冬は寒さ対策が必要なため、屋外よりも日当たりのよい室内で育てるのがおすすめです。
 サヤエンドウは、秋に種を蒔くと春にマメができます。上記3つよりは収穫まで時間がかかるので、じっくりと観察しながら育てたい方におすすめ。可愛らしいお花が咲くのもポイントです。種まきのタイミングが重要となるため、種子が入っている袋をよく読み、お住まいの地域にあった播種の最適期間を見定めるのが重要です。

―現在、人気が高まっている植物には、どんなものがありますか。

石田さん 「ビカクシダ」の仲間が注目されています。熱帯地域に自生する着生のシダ植物で、その独特な見た目やインテリアへのなじみやすさで人気を集めています。咲くやこの花館でも約20種を栽培展示しています。比較的育てやすい植物ですが、寒さには強くないので注意が必要です。最近ではホームセンターなどで数百円から手軽に購入することができます。咲くやこの花館でも、土日祝日に開店している植物販売店で珍しい種類を含めて取り扱っています。

―そのほか、最近の園芸のトレンドがありましたら。

石田さん 省スペースで植物を育てられる商品がブームです。マンションのベランダでも問題ない小型の植物や鉢など。また、端材でできた鉢、天然素材でできている土に還っていく鉢など、環境にやさしいとされている鉢も注目されています。
 「テラリウム」も話題となっています。テラリウムとは、主に透明なケースの中で植物を育てることをさします。ケースの中に1つの風景、世界が出来上がり、小さなスペースで楽しめます。また、閉鎖空間になるので、温度や湿度が必要な植物が育てやすいです。

―最後になりましたが、私は植物を枯らしてしまいがちです。何が原因と考えられるでしょうか。また、咲くやこの花館では、年間を通してどのようなお手入れをされているのですか。

石田さん 枯れる原因としては、水をやりすぎてしまう、逆に水が足りない、日照量の不足などが多いと思います。
・気温や湿度、土壌条件など生育環境をできるだけ自生地に近づける
・毎日観察できるようなところで育て、変化にすぐに気づけるようにする
ことが大事です。
 当館は温室がメインの植物園です。温室のような閉鎖空間では特に病害虫が広がりやすいため防除に気を付けていますが、温室ならではの害虫に苦心することも多いです。薬が効きにくい害虫は手作業で取っていることもあります。また、自生地の環境に少しでも近づけられるよう、温度、湿度などを細かく調整しています。このように細かく目配りできるよう、栽培の担当班を熱帯地域、乾燥地、高山帯など4つに分けて栽培をしています。

―詳しく教えていただき、ありがとうございました。


やはり植物を元気に育てるには、人間関係と同じく、相手の身になって考え、心を尽くして向き合うしかないのでしょうね。

(文・青木理子)

◆「咲くやこの花館」とは 
1990年(平成2年)4~9月に開催されたEXPO’90「国際花と緑の博覧会」のメインパビリオンとして大阪市が建設した、国内最大級の大温室。約5,500種、15,000株のさまざまな気候帯に分布する植物を栽培展示している。

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