生協知っトクコラム

2025/04/01

第17号 楽しみ方あれこれ 展覧会最前線

 展覧会を紹介する原稿を時々書いている。会期が始まる前日に開かれる内覧会に参加し、学芸員の方のレクチャーを聞き、展示内容を見て、資料を確認しながらまとめる。展示品についての文章をあれこれ考えるのは楽しい。とはいえ展覧会は、好きな人はたびたび足を運ぶものだが、まるで興味がない層もいる。修学旅行以来、美術館に行っていないという知人に言わせると、「黙って絵を眺めるのが苦痛」「敷居が高くて行く気にならない」のだそうだ。

 だが最近の美術館は、そのような人々にも足を向けさせるべく、いろいろと仕掛けを用意している。以下、いくつか挙げてみる。
1、タレント
 音声ガイド(音声による作品解説サービス)の声や展覧会アンバサダーとして人気タレントを起用。タレントの声や、等身大パネルなど会場に設置されたビジュアル目当てに、ファンがライブ感覚でやってくる。
2、グッズ
 名画をモチーフにしたお菓子や文房具、Tシャツ、トートバッグなど、併設のミュージアムショップにずらりと並ぶ。観覧料以上の額をショップで費やす人も多い。
3、コラボ展開
 「作品をイメージした」という見目麗しいランチやデザートをミュージアム内または近隣レストランで提供。ホテル宿泊とコラボしているケースも。入場券が付いている(もしくは割引)ことも。
4、撮影OK
 かつては美術館の展示品はほとんどが撮影禁止だった。今は大抵の展覧会で「撮影OK」の表示が付いた展示品がある。「撮影してSNSにあげてほしい」とはっきり明記されている場合も。「オール撮影OK」すらある。そのような展覧会では、皆がスマホを持って1点ずつ撮影しているので、鑑賞というよりも撮影会の様相だ。

 上記の中でもとくにPR効果が高いと感じるのは「4」だ。展覧会に限らず、何か行動を起こす際、事前にSNSで調べるのは一般的なことになった。テレビや新聞などの“オールドメディア”よりもSNS情報を重要視している人が増えたためか、最近の内覧会にはインフルエンサーと呼ばれる人たちも参加している。時代は変わった。

 一方、展示そのものが目新しい場合もある。一例を挙げると昨秋、大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれた「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアートコレクション」。TRIOというタイトル通り、作者も年代も異なる3作品をセットにして展示していたのが特徴的だった。たとえば「夢と幻影」と題した3点は、作者がシャガールとダリ、そして三岸好太郎。ウサギとロバが合わさったような架空の動物、不気味で巨大な雲、雲の上で飛ぶ蝶の群れと、一見バラバラの主題が描かれているのだが、絵の前に立って見比べているうち、3作品に言葉では説明しがたい共通性を感じるではないか。展示形式に鑑賞のヒントを与えられた。そんな経験は初めてだった。

 年始に見た展覧会「モネ&フレンズ・アライブ」(神戸市中央区のKIITOホール)は、方向性は異なるものの、斬新だった。展覧会といっても静寂の空間に作品が並ぶ会場ではない。モネやルノワール、セザンヌなどの有名な印象派絵画が映像化され、次々にスクリーンや床に映し出されるという趣向。映像に合わせ、誰もが知るクラシック曲が大音量で流れ、時にはほのかに香りまで漂う。絵がスクリーン用に拡大されているので、印象派らしい大胆な筆遣いもはっきり見える。そこには、「音楽や香りの力も借りて、拡大画像の印象派絵画をどうぞ隅々まで味わって!」という、大いなるサービス精神があった。ちなみにこのような展覧会は世界的にも人気なのだそうだ。

 展覧会を楽しむ間口が広がってきたことについて、美術ライターの池本新子さんは「アイドルやグッズなどを入り口として、これまで展覧会に縁がなかった人もアートに触れるチャンスが増えた。すばらしいこと」と評価。「本物を間近で見ることによって、美術に開眼する可能性がある」と期待を寄せる。

 最後になったが、関西に住む皆さんに直近の展覧会情報をお伝えしたい。ご存知の方も多いと思うが、この4月から6月にかけて、教科書に登場するような国宝を含む名品ぞろいの展覧会が京都、奈良、大阪で開催される。京都国立博物館「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」(4月19日~6月15日)、奈良国立博物館「超 国宝―祈りのかがやき―」(同)、大阪市立美術館「日本国宝展」(4月26日~6月15日)の3展覧会で、うち京都国立博物館と大阪市立美術館は「大阪・関西万博開催記念」と銘打ったもの。インバウンドを主なターゲットにした企画なのかもしれないが、われわれ関西人にとって好機である。これほど多くの国宝が集中するタイミングは、東京以外ではまずあり得ないから。なんと、大阪市立美術館には金印「漢委奴国王」もやってくるそうだ(展示期間は5月7日まで)。めったにない機会、時間を作って各館に足を運んでみてはいかがだろう。

(文・青木理子)

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