2021/10/01
第3号 飲み会、行きたいですか?
▽立ち話が減った
ばったり会った知人と立ち話する、というシチュエーションが最近めっきり減った気がする。
そもそも外出をできるだけ控えているから人と会う機会が少ない。出掛けたとしても道行く人のほとんどがマスク着用なので、瞬時に知り合いと判別できない。そしてたとえ顔見知りと気付いても、「近寄って会話してリスクにつながらないか」「相手に嫌がられないか」などと気後れし、つい声を掛けそびれてしまうことがある。
相手も同じだったのか、帰宅後に「さっきあなたを見たよ。元気そうで良かった」とメールをもらったことがある。直接言葉を交わさずとも、お互いの無事が確認できたらうれしいものだ。対面で話さなくても十分、むしろ今は程良い距離に感じる。私だけだろうか。
▽「距離保ったコミュニケーション」3割望む
BIGLOBEが行ったアンケート(「新型コロナウイルスワクチン接種後の生活に関する調査」。全国の20代~60代男女1000人を対象とし5月下旬に実施)によると、「接種後も元に戻ってほしくないと思うことは」という問いに「一定の距離を保ったコミュニケーション」(31.2%)、「会社の飲み会や接待のない生活」(32.9%)などの回答があった(複数回答)。約3割の人が「飲み会がない生活」を続けたいと思っている結果にちょっと驚いた。
かつて頻繁に行われていた仕事帰りの宴会や知り合いとのランチ。それらがなくても「世の中回っていくのだな」という意識は浸透してきた印象がある。
かたや、オンラインミーティングはこの1年半で幅広く定着した。会議や授業はもちろん、学会、講演会、コンサートなど、あらゆる集いが日々、画面越しに開催されている。
私事だが、先日、Zoomを利用した大学の同窓会があり、卒業以来一度も会っていなかったクラス仲間と久しぶりに〝再会〟した。海外勤務や育児、介護中などさまざまな環境に身を置いたメンバーが語り合えたのは、自宅から気軽に参加できるリモートだったからこそ。コロナ禍によって実現した貴重な機会だった。
▽飲み会文化、どうなる?
飲み会がない生活を今後も望む人が3割いた背景について、土田昭司(つちだ・しょうじ)関西大学社会安全学部教授(社会心理学)は、「在宅生活をきっかけに、夜、家族で過ごす時間がかけがえのない幸せと気付いた人も含まれているのでは」と推測する。
同教授は、飲み会文化の今後は定かではないが、リモート勤務の定着とともに衰退していく可能性もあるとし、その場合、「飲み会に代わる社員同士や他社の人とも話せる場は必要であり、それにかかる経費を補助するなど会社の理解があると良い」と提案する。さらにコロナ収束後、「試行錯誤を経て、再び飲み会文化が華やかに復活する可能性もある」ともみる。「いずれにしても私たちは元の生活に固執せず、状況を受け入れ、前に進んでいくべきです」。
多くの人がかつて行われていたような飲み会、親密なつきあいを思い描きながら、自粛生活を送っているだろう。飲み会が好きな人も、そうでない人も、それぞれが心地良いと感じる距離感を互いに認め、ナチュラルに尊重し合える世の中になればすてきだ。
(文・青木理子)