生協知っトクコラム

2022/01/06

第4号 黙食はおいしい

 あけましておめでとうございます。いつも読んでいただきありがとうございます。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて現在(2021年12月)、国内のコロナ感染は抑えられ、レストランやカフェの前に行列する風景も戻ってきている。
 他方、外食にためらいを覚えるという人もまだ多くいる。約7割の企業がコロナ下での忘年会、新年会は開催しないという報道もあった。感染者数が減っても慎重に暮らしていきたいという思いは根強いようだ。

 ▽友達との黙食
 私も11月、久しぶりに友達と昼ごはんをともにした。家族以外と食事をしたのは1年数カ月ぶり。テイクアウトしてバラが見頃の公園で食べようということになり、友達は幕の内弁当、私はピザを購入した。ひとしきりおしゃべりし、そろそろお昼というタイミングで彼女がきっぱりと言った。「黙食は気まずくなりがちだけど、食べ終わるまで頑張ろう」。
 食べ始めてすぐにその言葉の意味を実感した。誰かと一緒に食べていると、感じていること、目に映っているものをつい言ってしまいそうになる。「晴れて良かった」「おいしい」「バラがきれい」。浮かぶコメントも全部飲み込みながら10分足らずで食事を終えた。
 「黙食」は、もともと福岡市のカレー店経営者がSNSで発信したことがきっかけで各地の飲食店に広がったという。感染リスクを下げる効果は、スーパーコンピューターの解析でも裏付けられているそうだ。今や外食のマナーと言っても良いだろう。


 ▽小学校でも定着
 次女が通う地元の公立小学校でも、給食は全員が黒板の方を向いて無言で食べている。その間、教室内では、当日のメニューに関連した動画が上映されているという。動画は栄養教諭によるオリジナル作品とのことで、感染防止のためのこまやかな取り組みに頭が下がる。
 「動画を見ていたら、おしゃべりを防げるね」と娘に言ったところ「いや、もう(黙食は)習慣になっているし。話したいことがあったら早く食べてマスク着けて話しているよ」との返事だった。
 ところで外食といえば、緊急事態宣言中、在宅している家族分の食事まで朝昼晩作り続けた厨房担当(わが家では私)こそ、お店の味を楽しみたい欲求が高まっているはずだ。私の場合は同宣言中、ホテルのバイキング(ブッフェ)が恋しくて、前夜の残ったおかずを種類ごとに大皿に盛り、食べ放題気分で昼ごはんにしたりしていた。

 ▽今、ホテルバイキングは
 大阪新阪急ホテル(大阪市北区)の「グルメバイキング オリンピア」は2020年3月以来、長期間休業を余儀なくされ、2021年夏、いったんオープンしたものの短期間で再び休みに。同年10月から営業再開し、現在は、280ある席を約6割減らし、30分ごと50人ずつの入場で案内している。掲示でマスク会食を推奨し、客自身でなくシェフが一皿ずつ手渡す取り分け方法に変わった。同ホテル広報担当は「制約がある状況だが、できたてメニューをおいしいうちに食べてもらいたいというこだわりは、変わらず実現できている」と胸を張る。
 豪華なスイーツブッフェが人気の「ザ・リッツ・カールトン大阪」(同)では、週末のブッフェ予約はコロナ流行以前よりも増えているという。感染対策として、これまでも「マスク会食にご協力ください」と記したカードをテーブルに置いていたが、「より具体的な表現の方が伝わるのではないか」との意見から、新たに「会話の際はマスクをご着用ください」との文言も追加した。カードには「1人1人のお客様に少しでも安心して食事を楽しんでもらいたい」とのスタッフの思いが込められている。

 ▽よく噛んで、ゆっくり味わう
 「会話しないのは味気ない」と黙食に消極的な人もいる。誰かと同席していても、ストレスを感じずに黙って食べる方法はないものか。
 山中祥子(やまなか・さちこ)立命館大学食マネジメント学部助教(食行動)が提案するのは「映画や芝居を静かに鑑賞する感覚で外食に臨んでみては」との発想の転換だ。
 「今までは、話しながら何気なく摂っていた食事だが、食べているその瞬間に集中し、一口ずつよく噛んでみると、これまで気付かなかった食材のおいしさや特徴に気付くかもしれない。ここでの気付きを食後に語り合うのを楽しみにゆっくり味わうというのも食の楽しみ方の一つではないか」。
 食べ物との対話によって、これまでとは別趣の心豊かな食事時間がもたらされることだろう。

(文・青木理子)

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