生協知っトク情報(未分類)

2023/07/03
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第10号 ズボラでも挑戦!リサイクル

 スーパーなどの店頭で、リサイクルボックスをよく見掛ける。ペットボトル、食品トレー、牛乳パック。内容ごとの箱がずらりと並び、投入口いっぱいまで容器が詰まっていることもある。
 ある店のホームページをチェックしてみたところ、回収後、ペットボトルは卵パックに、トレーは固形燃料に、牛乳パックはトイレットペーパーに再生されていると分かった。さらに食用油は、精製されて液体せっけんになり、店舗で使われていた。時々使わせてもらっているあのせっけんが、元は天ぷらを揚げた後の油かもしれないとは。具体的に何に生まれ変わっているかを知ると、ワクワクする。
 と言いつつ、恥ずかしながら私は店頭リサイクルボックスを利用したことがほとんどない。理由は…正直に言うと、容器類をきれいに洗って、乾かして、袋などに入れて、スーパーに買い物に行く際に忘れずに持参する、というところまで気力が湧かない。いやもっと細かく言うと、洗うのはなんとかできるかもしれない。袋に入れて、店に持参も習慣化したらできるだろう。ネックは、洗ったものを乾かすスペースがないことだ。皿1枚増やすのも躊躇するわが家の手狭なキッチンの中で、たくさんの空容器を乾かすスペースを捻出することは非常に難しく思える。

 近年、リサイクルの取り組みは飛躍的に進んでいる。特筆すべきは、使用済み製品を同じものに再生する「水平リサイクル」だ。一般的なリサイクルが別な製品への再生をくり返した後、最終的にごみとして処理されるのに対し、水平リサイクルは、元の製品に使える品質の素材に戻して再び原料とするため、新たな資源の消費を抑えられるメリットがある。
 「水平―」の中でも注目を集めているのが、神戸市の「神戸プラスチックネクスト」である。同プロジェクトは、洗剤やシャンプーなど使用済みの日用品の詰め替えパックを分別回収、再び詰め替えパックに戻す「つめかえパックリサイクル」、プラ資源の回収と地域の人々の交流を兼ねたスポット「資源回収ステーション」の設置、家庭から回収した使用済みペットボトルを新たなペットボトルに戻す「ボトルtoボトル」の3本柱で推進。プラスチックの水平リサイクルを目指し、同市と各社が協力しながら取り組んでいる。
 そのほか全国を見渡すと、「使い終えたタイヤを合成ゴムなどの原料に戻す」(ブリヂストン)、「使用済みクリアホルダーを再製品化」(アスクル)なども。循環型社会に向けたチャレンジがあちこちで行われている。

 とはいえ、リサイクルは、企業側の努力だけでは成り立たない。資源となるごみを出す人の意識が重要だ。
 「プラスチックごみについて」と題した神戸市ネットモニターアンケート(2020年、3,136人回答)によると、プラスチックごみ問題に「関心がある」と答えた人は約34%、「ある程度関心がある」は約50%で、8割以上が同問題に関心を寄せていることが分かる。
 だが、店頭回収を利用している人は約51%。利用していない人約49%をわずかに上回った数字に止まっている。ごみ問題に関心がある人は多いものの、実際に店頭回収に協力するには、ハードルを感じる人も少なくないようだ。

 話を私自身に戻す。積極的に「リサイクルに出したい」と思うものが2つある。それは、卵パックとミニトマトが入ったプラスチック容器だ。どちらも基本的に汚れておらず、洗う必要がほとんどないため、干す場所も要らない。一方で、プラごみの袋に入れると、ほかのプラがあまり入らなくなるほどかさばる。そのため、「この2つは、リサイクルボックスに」といつも思う(発想がズボラで、重ねてお恥ずかしいのだが)。

 SDGsに関心がないわけではないが、日常的にリサイクルに協力するところまではいけない、私のような層。そういう人たちが一歩前に踏み出せるきっかけはないか。
 「神戸プラスチック―」で詰め替えパック回収に携わっている、小売り各社の担当の方に「干し場問題」についてご相談してみた。
 とくにシャンプーなどの詰め替えパックは、洗うのに手間が掛かる。そこで、「パックを半分に切って洗い、物干し竿で洗濯物といっしょに乾かしています」(「光洋」総務部の林麗子さん)。「パックの袋にハサミを入れてアジの干物みたいに全部開いて、1枚の板状に。それをお風呂場で洗って干す。水を切りやすいです」(「ウエルシア薬局」総務部の朝比奈恵美さん)。実践的なアドバイス、ありがとうございます!
 お2人によると、リサイクルに関わるアイデアは、お客さんや店舗スタッフに教えてもらうことが多々あるという。すべての人が立場を超え、知恵を出し合い、協力して初めて、リサイクルは実現する。その過程を楽しみながら、できることから取り組んでいきたいと思う。

(文・青木理子)

2023/04/03
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第9号 防災は散歩から

 神戸のポートタワーが部分的に見えるマンションに住んでいる。家を探していた際、海を身近に感じられる雰囲気に魅了され、入居を決めた。後から分かったことだが、マンションが建つ地は海抜が低く、神戸市のハザードマップでは、2020年度まで津波の浸水想定区域に入っていた(防潮堤の整備が進みつつあり、現在は浸水エリアにはなっていない)。
 なので「防災」と聞くとまず「地震+津波」が思い浮かぶ。大きな地震が起こり、いったん収まったとする。その後、非常階段を使って外に出る。坂道を徒歩で上り、指定避難場所に向かう。どれくらいの荷物だったら持っていけるか。津波の影響を受けずに高台まで逃げられるだろうか―­­。毎回同じ想像をするが、細かい点までイメージできず、結局、非常用リュックは懐中電灯など最低限のものを入れて放置したままだ。
 そんな私の“防災観”を一新する出会いがあった。大阪市東淀川区で防災士として活動している田原佳織さん。先日開催された防災イベントにアドバイザーとして参加していた田原さんは、「これ、昭和のパワポです」と言って、昔の夏休みの自由研究みたいな大きな模造紙を広げて自己紹介してくれた。
 「パワポ」などによると、田原さんの息子さんは生後45日で障がいがあることが判明、中学から同区内の支援学校へ。入学後、学校の防災対策が不十分と感じた田原さんはPTA役員に立候補、3年間会長を務めた。PTA活動の一環として防災対策を進め、「支援学校の生徒に役立つ防災措置は、地域の高齢者や子どもにも役立つ」との考えに至り、防災士の資格を取得。東淀川区や学校、地元の親子グループなどと連携して活躍している。
 田原さん流の防災活動の柱は、自転車や徒歩で地域のあちこちを回ること。「もともと地図を見たり散策するのが好きだった」のを生かしてフィールドワークを行い、地元の危険ポイントを可視化した地図を作成した。「『ブラタモリ』ならぬ『ブラタハラ』なんですよ」と笑顔で語る田原さんに「楽しみながらできる防災」をいくつか紹介してもらった。

徒歩や自転車で防災散歩(走)をする田原佳織さん

 田原です。防災散歩「ブラタハラ」や「誰にも任命されていませんが勝手に河川モニター隊が行く」などをやっています。今日から気軽に取り組める災害準備を提案したいと思います。
① 防災散歩
 おすすめポイントは、実際に歩いて住んでいる地域を隅々まで知ることによって、どこに避難したら良いのか、どこにAEDや公衆電話、避難所、帰宅支援ステーションがあるか把握できることです。また、ブロック塀やブルーシートが掛かったままの修繕していない屋根、狭い道路、空家など危険ポイントも発見できます。
 そして防災の観点からだけでなく、その場所の地理歴史に触れ、民話や伝承などにも興味を持つことで、より自分の町を深く理解でき、好きになれるかもしれません。
② 子どもたちに向けて
 自分の命を守れる力を育てたいと思っています。「津波てんでんこ」(津波が来たら、できるだけ早く各自で高台に逃げろという言い伝え)など、先人たちの経験に基づく教えも積極的に伝えたいです。
 子どもがいる家庭では、親子でいっしょに非常持ち出し袋を作ってみてはどうでしょう。一般的に入れた方が良いとされている中身だけでなく、各家庭で何が必要か親子で意見を出し合ってください。袋を作ったら実際にそれを背負って歩けるか確認が必要です。
 小さいお子さんの場合、自分の名前や住所、保護者の携帯電話番号、アレルギーの有無などについても言えるかチェックしましょう。言えないようだったらそれら必要情報をまとめた「サポートペーパー」を作り、できるだけ身につけておくようにしたいものです。
③ 車の活用
 災害時、渋滞が予想される道路は車での避難は避けるべきですが、マイカーを持っている家庭では、車中に防災グッズを備えておくのも良い方法です。非常持ち出し袋、スマホ充電用のケーブル、いざという時に窓ガラスを割って脱出できる道具などいろいろ積めます。車は発電機代わりになるので、ガソリンがなくなりかけてから補充するのではなく、半分になったら給油すると決めておくのも良いでしょう。
④ 備蓄の「見える化」
 時々は家にある乾物(米、餅、パスタ、春雨、切り干し大根、ひじき、わかめ、高野豆腐など)を確認してみましょう。意外と備蓄がいろいろあることに気付いて驚くかもしれません。備蓄の「見える化」をしていると、いざという時に慌てずに済みます。家にある食材だけで1週間分家族の献立を考えて作ってみるのもおすすめです。最初は冷蔵庫の中身から消費して、保存食品を使い切るまで知恵を絞ってみてください。「予行演習」は、災害時にきっと役立つはずです。
⑤ その他
 「子ども」の項目でも触れましたが、非常持ち出し袋は高価な既製品ではなく、何がどれくらい必要かよく考えて、オリジナルで準備した方が良いです。中身は100均などを利用して揃えてみても。自分にとって何が必要かよく考え、取捨選択する機会を持つことが重要です。すべては入りきらないので。
 自宅が無事なら自宅を避難所として過ごすケースも考えられます。その想定で、断水時のトイレの備えなどもしておきましょう。
 何よりふだんの生活をより良くしようと心掛けることがおのずと適切な防災につながると感じています。気負わずに日常の中で少しずつ防災の工夫を重ねていってもらえたらと思います。


まずは防災散歩から始めてみたい。

(文・青木理子)

2023/01/10
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第8号 反抗期 量販店の距離感で

 子どもが大きくなると、家の中が狭くなる。中学生と高校生がいるわが家では、棚からモノがはみ出し、常に床に何かが散乱している。ごくたまに断捨離に着手するが、どうしても捨てられない段ボール箱がある。
 それは、娘たちが幼い頃の作品群だ。マルがいくつか並ぶ絵の下に「1歳0カ月 アンパンマン」と書かれた画用紙、大小の人らしき図形に「2歳 ママとわたし」と添え書きされたメモ帳の切れ端…見つけるたびに涙腺を刺激され、元の場所に箱を戻さざるを得ない。
 小学校中学年くらいまでは休みの日になると家族で出掛けていたが、最近は、それもすっかりなくなった。娘たちを誘っても「行きたくない」「友達と行く」などと即、断られる。たまにどうしてもいっしょに外出しなければいけない場合も、長女はできるだけ私から離れて歩こうとする。先日は、梅田の地下街で見失った。

 同年齢の子を持つ母友たちからも「基本的に子どもからいつも無視されている」「必要に迫られて一緒に電車に乗っても、子どもは違う車両に移動する」「3者面談。どうしても別々に行きたがるので、走って行って校門で待ち伏せするしかない」など、切なさ溢れる近況を聞く。「ママの姿が一瞬見えないだけで泣いていたあの子が?」と驚くが、密接に関わり合った親子関係の時期はいつの間にか遠くなり、子が巣立ちの準備を始めたことを実感する。
 西日本新聞のアンケート(2019年)によると、反抗期の始まりは小学生からが約58%、中学生からが約31%という結果だった。高校生から、というケースは約3%とぐんと減る。ただしこれはスタート時期の話で、反抗期がどれくらい続くかとは無関係だ。「反抗期は小5から高2の現在まで継続している」という持久力(?)のあるお子さんの例も聞く。

 母たちが嘆く一方で、子どもたちはどのような気持ちで親との関わりを捉えているのだろう。次女を通じて、中学生18人に聞いてみた。
 まず、いつ頃から親に不満を感じていたか。「小5以前…5人」「小6…9人」「中1…3人」と、小6が一番多かった。不満を抱きながらも、実際に親とどのように接しているかというと(父母それぞれについて回答)、「楽しく会話している」(父母ともに…6人)(父と…7人)(母と…2人)、「不満はあるが話している」(父母ともに…2人)(母…3人)、「口を利かない」(父…2人)(母…1人)という結果に。普通に明るく話していても、内心は異なる場合が多いようだ。
 親子関係がうまくいかない場合、「どちらに問題があると思うか」に対しては、「親…4人」「子…2人」「両方…6人」「どちらでもない…2人」との回答。「両方」が最多で、親だけに問題があると答えた4人を上回った。中学生ながら冷静に捉えていることが分かる。
 具体的な不満点は、母に対しての場合、多い順で①スマホ・ゲームの使い方(5人)①勉強、成績について要求が過大(同)③性格、言動(4人)④プライベートに干渉してくる(3人)④事情や要望を聞いてくれない(同)④人生設計を縛ろうとする(同)④センスや趣味が合わない(同)という結果だった。
 やはり、スマホ、ゲーム機の使い方と勉強は、親子が最もぶつかりやすい問題のようだ。親の言動や価値観に対して子どもが反発している様子もうかがわれ、子どもが親に服従する存在でなくなっている状態や親を評価するまなざしが生まれている点も見逃せない。
 一方で、親元を離れたいかとの質問には、「どちらでも良い」(7人)が最多。「離れたい」(4人)、「離れたいが許されない」(3人)、「離れたくない」(2人)と続いた。不満はあるものの、中学生の段階では、家を出て行く選択に必ずしも直結していないようだ。
 そのほか「父は100%しか許さない性格で、少しでも気にくわないと怒られる」「自分の都合でイライラして私や弟、母に当たるのを(父に)やめてほしい」などの切実な声も寄せられた。

 神戸市の公立中学校で約30年間にわたり、生徒指導や保護者相談に携わった経験のある元校長は、「どんなに反抗的な態度を取る子でも、子どもはいつも親を意識し、できれば親の期待に応えたいと思っている。親が心の中で『こうしてほしい』と考えている願望を敏感に察知し、逃げ場がないと感じるケースも少なくない。幼い頃と同じように接すると、子どもを追い詰め、苦しめてしまうことにつながる」と話す。子がある程度成長すると、ほどよい距離感のバランスは、むしろ子ども側の方からが見えやすいのかもしれない。
 さらに元校長は、「子ども自身の将来への展望、そしてコロナ禍や戦争などの社会的不安が、親が想像する以上に彼、彼女らに重くのしかかっている」と指摘する。親を遠ざけようとする態度の背景には、「親の後ろに広がる世界とこれからどう対峙していけば良いのかという恐れが含まれている」とみる。

 わが家の子どもたちが幼かった頃は、おもちゃや洋服を買うのも、友達と遊ぶのも、ほぼ親が主導していたように思う。そして、子どもたちはそれを受け入れ、楽しんでいるようだった。だが中高生となった今は、自分なりに広い世界と向き合いはじめている。
 思春期の子を持つ親は、身近な人生の先輩として、聞かれた時にアドバイスする―­そう、たとえて言えば、量販店のスタッフのような距離感で―­くらいの姿勢がちょうど良いのかもしれない。親は子の成長に応じて、子どもに直接注いでいた関心やエネルギーを、運動や労働、趣味などに振り向けていくのが健全なのだろう。
 ひたすらかわいかった宝物のような幼少期と同様、反抗期もいつか、ほろ苦くも大切な思い出として振り返る日が来るに違いない。

(文・青木理子)

2022/10/01
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第7号 ペット愛の行方

 LINEのアイコンがいつの間にか犬や猫になっている人がいることに、ある日ふと気付いた。コロナ禍となってから、ペットを飼い始めた知人たちだ。長く続く閉塞感の中で、生き物に癒されたい思いはとてもよく分かる。私自身、疲れた夜は、ふわふわした動物の動画を見ながら眠りに落ちることが多い。
 一方、最近気になっているのは、元ペットと思われる外来生物の話題だ。5月、琵琶湖で体長1メートルのチョウザメが見つかったというニュースはインパクトがあった。チョウザメは淡水に生息する古代魚の仲間で「生きた化石」と呼ばれる。現在、日本国内で養殖以外のものは生息していないはずで、大きさから推測するに「数年掛けて飼育した上で放流されたか、逃げた」可能性が高いという。生きたまま引き取った滋賀県立琵琶湖博物館はツイッターで「飼育魚は逃がさないように、最後まで責任を持って飼うようにお願いします」と呼び掛けていた。
 チョウザメが自分で琵琶湖に逃げてきたとは考えにくい。誰かが何らかの事情で飼えなくなり、「死なせてしまうよりは」と、本人(チョウザメ)の幸せを願いながら琵琶湖に放したと考えるのが自然だろう。
そういえば子どもの頃飼っていたインコが、10センチほど開いた窓から外へ出て行ってしまった際、私も「さびしいけど、外で自由に暮らした方がインコにとっては良かったのかもしれない」などとお花畑的な納得の仕方をしていた。大人になって、「野生化したインコが大群となり、大きな鳴き声で近隣住民の生活を脅かしている」などという記事を読み、インコを逃がしてしまったことは罪作り以外の何ものでもなかったとようやく分かった。
 「外来生物問題」というが、生き物自体に罪はなく、結局人間が何らかの形で介在し、生き物を違う地に住まわせてしまっているだけなのである。強い生命力を持つ者たちは、新天地で生き残り、在来種を駆逐していく。いずれそのしっぺ返しは人間にも及ぶかもしれない、だから生き物を人為的に移動させるのはやめるべき。それは説明をしたら多数の人が理解する理屈だ。
 ところがこの問題のやっかいなところは、「じゃあ、その理屈を通すために目の前で生きている生き物(外来種)の命はないがしろにしても良いのか?」という感覚なのではないだろうか。とりわけペットとして飼っていた場合、注いでいた愛情も深いだろう。
 大阪府HPの「動物を引き取ってほしいとお考えの方へ」というページには、「助けられるのはごく一部であり、多くの動物は『殺処分』せざるを得ない状況です」とあり、「相当な理由がない限り、ペット動物の引き取りを行っておりません」と強調している。
 大阪市立自然史博物館の和田岳主任学芸員は、「飼いきれなくなったら放すという行為は、動物愛護法違反であり、放した個体が生き延びれば外来生物問題を引き起こす。一方で、放された大部分の個体は生き延びない。とても無責任な行為と考えています」と話す。
 同博物館は2020年、外来生物問題の基礎知識を広く知らしめ、地域の自然をどう未来に残していくかを提起する特別展「知るからはじめる外来生物~未来へつなぐ地域の自然~」を開催した。和田学芸員は同展の解説書の中で「外来生物問題は、最初に外来生物を少数放すだけで、個人で簡単に引き起こすことができる。とても簡単にできてしまう身近な自然破壊。それが外来生物問題なのです。それだけに、1人1人の自覚がとても重要になります」と訴えている。
 ところで私はお恥ずかしいことに、外来生物=外国から来た生き物だと長らく誤解していた。国内の他の地域から来たものも外来生物で、外国からのものと同じようにその地域の生き物に重大な影響を与えてしまう。外見もほとんど同じように見えることなどから分かりにくいが、持ち込まれた生き物によって、地域に元からいた固有の生き物がいなくなる可能性が出てくる。外来生物問題は幅広く、奥深い。
 まずは自分たちが大事に飼育している(していた)ペットたちとは別に、どんな地域にもずっと前から棲み着いている生き物たちがいることを想像してみることが重要ではないだろうか。その姿勢が、生き物を愛し、命を大切に考える第一歩なのだと思う。

(文・青木理子)

 ペットとして輸入されたものが遺棄され、日本各地で見つかっているカミツキガメ。今のところ関東の河川や湖沼などで定着が確認されている。今後、関西でも定着が確認されるかもしれない。
(大阪市立自然史博物館の和田岳主任学芸員提供)

2022/07/01
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第6号 話そう!更年期

 同年代(アラフィフ)の友人らと「これまでのコロナ生活で何がしんどかったか?」を語り合った時のこと。外食しにくかった、気晴らしできなかった…いろいろ挙がる中、1人が「人に会えない時期、めまいとか肩こりとか、病気とまではいかない不調を誰にも言えなかったのがつらかった」とつぶやいた。すると別な友人が「でも会う機会があったとしても、更年期のことはなんとなく話しにくくない?」。確かにそうやね、とその場にいた全員がうなずいた。

▽離職者46万人、「社会全体でサポートを」
 そんな会話をした後、更年期をテーマとしたNHKスペシャルを見た。番組で紹介されていたNHK実施の大規模アンケート調査によると、40~50代女性のうち更年期症状を経験している人は約4割。調査を基にした推計では更年期障害で離職した人は46万人にも上るとのことだった。更年期の不調によって、人生の岐路に立たされる人がたくさんいると知り、驚いた。
 更年期とは多くの女性が閉経する50歳前後の約10年を指す。この間、女性ホルモンの分泌量が急激に減る影響で、様々な症状が起きるとされている。代表的なものとして、のぼせやほてりなどの「ホットフラッシュ」が思い浮かぶが、現れ方は多岐にわたり、軽重も個人差が大きい。
 多い日には30人以上の更年期患者が訪れる「堀聖奈産婦人科・乳腺クリニック」(神戸市西区)。その中にも、症状がきつく、仕事を辞めざるを得なかった人がいたという。堀院長は「今の50歳前後の女性は、社会でも家庭でも重要ポジションにいる、いわば働き盛り。彼女たちが更年期をうまく乗り越えていけるよう、社会全体でサポートしていくべき」と話す。SDGs(持続可能な開発目標)の1つ、ジェンダー平等実現にもつながっていくだろう。

▽なぜか言えない
 私自身は数年前、突然不眠になった。どうやっても眠れないので毎晩布団の中であれこれ思いを巡らすうち、すっかりネガティブ思考に陥ってしまった。食欲もほとんどなくなり、家族に「頬がこけてきた」と指摘されるようになった。「自分は大病なのでは」という不安にとらわれ、どん底の精神状態だったある時、内科医に勧められ、全身CT検査を受けた。結果は「異常なし」。
 「不眠は更年期の影響かもしれませんね。めずらしいことではありませんよ」。その言葉で、目の前にあった霧がぱっと晴れ、抱えていた不安定な気持ちを医師に吐き出した。そしてその晩はぐっすり熟睡できた。
 今でも当時、どうして周囲の人に早めに相談できなかったのだろうと考える。「もしかして更年期かな?」と疑った瞬間もたびたびあったのに。
 一つ思い当たるのは、「不眠くらいで苦しいと言ってはいけないのではないか」という引け目だ。ホットフラッシュのような特有の症状であればともかく、原因不明で眠れないだけの私がそのことをわざわざ人に話すなんて…と、自分の中で〝症状ヒエラルキー〟を作り上げていた。それ自体ネガティブ思考の一環だったのかもしれないが。
 悩みを共有すること自体、一筋縄でいかない更年期。私たちはどう向き合っていけば良いのだろう。

▽〝先輩〟と語り合おう
 まずは更年期外来の受診が理想的だが、病院に足を運ぶのをためらう女性は多いようだ。「婦人科検診で来院した人が『実は更年期症状に苦しんでいて』と打ち明け、通院が始まるケースも多い」(堀院長)という。同クリニックでは、副作用の少ない漢方薬をはじめとし、本人の希望を聞きながら症状に合った治療法を進めている。気分の落ち込みや不眠など心の症状には、診察室でじっくりと話をして改善を図る場合も。
 堀院長は「病院の敷居が高いようなら、ひとまず周囲の人に思い切って話をしてみてください。同世代の女性でも良いですが、更年期を経験済みの〝先輩〟世代なら、より気楽に語り合えるかもしれません」と勧める。「どんなにつらくても何年かしたら必ず落ち着きます。だいじょうぶです」。
 ところで、更年期症状に悩む皆さんは同居家族にどんな対応を求めているのだろう。私の周囲約10人に聞いたところ(複数回答)、「とにかく話をうんうんと聞いてもらいたい」(2人)、「『ありがとう』とか『頑張ったね』などの声掛けが欲しい」(1人)、「ほっといてくれ」(1人)などの回答があったが、圧倒的に多かったのは「しんどい時、代わりにごはんを作ってほしい」(8人)であった。ご参考まで。

(文・青木理子)

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